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オピニオン
院長・副院長からの
『素朴な疑問』への意見

日本人のきれい好きは悪くないのですが、何であんなに洗剤で体を洗いまくるのでしょうね。
テレビには洗剤のCMが溢れていますし。
近年、乾燥肌の人が増えていて、老人性皮脂欠乏症の患者さんが増えています。
アトピー性皮膚炎もかつては目立つ事はありませんでした。
なのに洗剤でゴシゴシ、ナイロンタオルで背中ゴシゴシ。かゆみの軽減には満足ですが・・・。
もっとも汚れているところは頭、顔、首、手足、それに陰部くらいかと思うのですが。
これではね。「潤い肌よ、さようなら~」ですね。
食べ物の賞味期限は皆さん注意して買い物されますが、どーして半年や一年も前にもらって残っていた薬を平気でのむ患者さんが多いのでしょうねぇ。
薬にも使用期限があります。
物にもよりますが製造から2~3年が多いようです。
医療機関では健康保険の範囲で現在の病気(当然、急性疾患と慢性疾患に対する違いはあります)に対する投薬はしますが、
原則として将来の病気に対する予防的処方はしないのです。
狭心症などに対する頓用薬も、印刷してある使用期限が過ぎたものは廃棄して改めて出してもらうべきです。
風邪に対する抗生物質の処方については、EBM(科学的根拠に基づいた治療)の観点から従来の使われ方に対して疑問が出されています。
風邪は万病の元と言われます。
原因はウイルス感染なので細菌に対応する抗生物質は効果がありません。
しかしながら、巷では風邪の診断のもと、必ず抗生剤を処方する医師(開業医)が多い。
かつて私も先輩の教えに従って風邪の患者さんに抗生剤を出していた時代がありました。
先輩曰く「風邪のウィルスにつけ込まれるような状況で、細菌による感染が重複すると命取りになりかねない。
よってこれを予防するために抗生剤を処方するのだ」と。
なるほどと思う反面、ホンマにそうかいな?と思っていたので、あるとき私の責任に基づいて風邪の患者さんに抗生剤を出すのを恐る恐る止めてみたのです。
でも、なぁーんも問題は起こりません。
なーんだ、やっぱり、そんな必要はなかったんだ!
以来、私は原則として風邪の患者さんに抗生物質の処方をする事を止めました。
ウィルス感染による風邪に抗生物質は無意味な薬であるので、不要な投薬は避けるべきであると言えます。
殆どの抗生剤が効かないMRSA(メチシリン耐性黄色ブドウ球菌)や、MRSAに有効な数少ない抗生剤バンコマイシンも効かないVRE(バンコマイシン耐性腸球菌)などの出現には私達医師の抗生剤の出し方にも責任の一端があります。
また、患者さん側も抗生剤に対する盲信を改めて「マイシン出してください」などと要求されないことを望みます。
風邪の治療は咳、痰、ノド痛、鼻水、発熱などに対する対症治療が中心となりますが、油断は大敵です。
何故なら風邪は全身病だからです。
肺炎などの二次的可能性に対しては、胸部の聴診はもとよりX線撮影などを用いた診断により、躊躇無く抗生剤を処方する決断も私達医師にとって不可欠な一面なのです。
テレビをはじめあちこちで血液サラサラとかドロドロという言い方を耳にします。医療機関での説明で聞かれた患者さんも少なくないのですが私は異議を唱えたい。

血液は血漿と血球に分けられ、割合はほぼ50%づつです。
血漿は水分、血球は赤血球、白血球、血小板に分けられますが放置すると沈殿し血餅と呼ばれる事もあります。
何となくお解りかと思いますが血液は僅かに粘稠性のある液体です。
これをサラサラにするような薬や食べ物があるのだろうか。そんな物はありません。
赤血球やその他の細胞成分を破壊するような物であればサラサラは達成できるかも知れませんが命はありません。
血液は通常心血管内にある時は固まろうと働く事はありませんが血管が破綻して出血すると血小板が中心になって止血機能を発揮します。
更にフィブリンという物質と一緒になって凝固を行うのです。
血管の一番内側の内膜が動脈硬化で荒れていたり、流れが渦を巻くような状態の時も血小板が状況を誤解して血液の固まり(血栓)を作る事があり、このような可能性の高い患者さんには抗血小板薬を処方する事になります。
これは血小板の機能を抑えるのが目的であって、これによって血液がサラサラになるなんて事はあり得ないわけです。
要するに、血液をサラサラにしたければしっかり水分を取ることです。
水彩絵の具を思い浮かべて下さい。
水を少しづつ加えていくと次第にサラサラになってきます。
これと同じです。
血液中の水分が少なくなった脱水状態がドロドロの状態というわけです。

患者さんに解りやすくという意味も理解できますが、薬の作用・効能効果は誤解を生むような説明ではなく科学的にキチンと説明すべきだと思います。
患者さんの理解能力は決して低くはありません。参考までに日常処方されている主な薬剤を以下に記載しておきます。

抗血小板薬(バファリン、バイアスピリン、ペルサンチン)、
抗凝固薬(ワーファリン、パナルジン、リクシアナ、イグザレルト)

健康食品は精神安定剤?

世の中、健康食品や各種サプリメントのCMで溢れかえっています。結構な値段のようですが売れ行きは絶好調と聞きます。
健康志向が異常なほど強い日本人(だけでもないかな?)の関心が高いのは当然かも知れません。
こういったものを如何に活用していくか、しっかりと検討した上で使用を決めることです。
日常バランスが取れた生活が出来ていればこのようなものを摂取する必要はないでしょう。
しかし血液検査などをしてみると櫛の歯が欠けるように不足部分を見ることが結構あります。
その辺のこともカバーする手段としては悪くないと思いますが、正直なところ私はお金を出してまで購入する気にはなれません。
こういった商品は日本人にとって精神安定剤のような気がしています。

でも、呉々も怪しげな物には手を出さないようにしてください。
命に関わった事件もありますしね。

栄養剤の注射をして欲しい、と言われることがしばしばありますが、いかにも日本的な発想だなあと思います。
国立健康・栄養研究所が「健康食品」の安全性・有効性データベースを検索できるホームページを開設しています。
以下のURLを参照してみて下さい。

https://hfnet.nibiohn.go.jp/

薬の飲み合わせを知っておきましょう

現在、我が国で医師によって治療に用いられている薬剤は約12,400種類あります。

その内訳は内用(内服)薬6,877種、注射薬3,478種、外用(塗布・貼付)薬2,030種、その他となっています。
薬と薬の飲み合わせについては医師や薬剤師がチェックしますが、決して良い味とは言えない薬を飲み合わせの知識を知らずにお茶やジュース、牛乳などで服用している患者さんは案外多いのではないでしょうか。
服薬と飲食物に関する注意は患者さんの側でも知っておくことが大切です。

一番良い薬の飲み方は白湯で飲むこと

細かく述べると一冊本が出来るくらいですので、ここではポピュラーな薬剤と気を付けなければならない飲食物の主な組み合わせを述べることにします。ひとつ理解をしていただきたいのは、同じ目的の薬でもそれぞれちがう構造と組織を持つものが多種ありますから、この組み合わせは絶対と決めつけられるものではありません。また、常に配慮しなければならない個人差の問題もあります。しかし、かなりの部分で該当しますので、ほぼ絶対的なものと受け取って注意を払うことが安全に繋がると思います。

◆ 血圧降下剤 と グレープフルーツ

⇒ カルシウム拮抗剤という部類の血圧降下剤は効果が増強されます。ジュースも同じく気を付けなければなりません。
前後3時間くらい空ければ大丈夫と言われていますのでグレープフルーツ好きの方はこの点ご用心!&ご安心です。

◆ 鉄剤 と お茶(日本茶、紅茶)、コーヒー

⇒ 鉄はお茶やコーヒーの渋みの成分であるタンニンと結びついて酸化鉄に変化しますが、そうなると腸管からは吸収できなくなってしまいます。せっかく服用した鉄剤もそのまま便と共に体外に排出されてしまうわけです。鉄剤服用の前後1時間はお茶やコーヒーは控えた方がよいのです。ところでウーロン茶はどうなのでしょうか。ウーロン茶の製法は多様でタンニンの多いものから殆ど含まれていないものまであるようです。とりあえず避けた方が無難なようですね。

◆骨粗鬆の薬や抗生物質 と 牛乳

⇒ カルシウムの良質な供給源である牛乳が骨粗鬆の薬と相性が・・・、エェーッ?とビックリですが

エチドロン酸(薬名:ダイドロネル)はカルシウムと結合して成分変化を起こし、吸収率がガタ落ちしてしまうのです。
この薬の処方を受けている時だけは注意が必要です。ところで実はこちらの方が以前から言われているのですが、抗生物質の一部にはカルシウムと反応しての吸収率が不安定になり効果が得られないことがあります。
急性疾患に使うことが多い抗生物質が効かないと速やかに治らないこともありますので知っておくべきです。

◆抗凝固剤 と 納豆、クロレラ

⇒ 抗凝固剤は、血液が流れる部分に人工の物質を移植したり置換したりするような手術を施行した後に継続的に処方されるものです。血液は異物に触れると凝固する性質がありますが人工弁や人工血管などを用いた手術後に血小板の働きを抑えるなど血栓を作らせないように抗凝固薬を使うのです。納豆やクロレラに含まれるビタミンKなどは抗凝固薬を無効にしてしまいますので血栓が出来やすくなり脳血栓症などの合併症を引き起こす可能性が急増します。手術を受けた患者さんは主治医から厳重に言い渡されると思いますが内科的にあまり劇的でない治療を受けられた方は印象が薄れてしまうこともあろうかと思います。健康によいと思って摂取したことが思わぬ事態を招きかねないので注意が必要ですね。

家庭内血圧が医院で測る血圧と違うのはなぜ?(白衣恐怖症)

医療機関で血圧を測ると高く出てしまう人が少なからずいます。
私は開業前、由緒正しい?外科医でしたので外来で血圧を測ることは殆どありませんでした。
ということは、おおよそ20年この事象に遭遇していなかったわけです。
もちろんこのような緊張性血圧上昇現象については医師の常識なのですが、初対面の人はともかく身内や親しいご近所の人、付き合いの長い患者さんなどは当然診察室で血圧測定をしてもリラックスして普段と変わりないと思っていました。
が、違っていました。私の予想よりもデリケートな人達が多かったのです。
開業後かつての患者さんが受診して来られて初めてそのことに気が付き、市販の血圧計で家庭内の血圧を測定してもらい、その記録をチェックすることを始めました。
当初は市販の血圧計の精度も不明で、購入してもらったものを持参してもらい、診察室の血圧計と比較したりもしました。
現在はほぼ信用できるとして「我が家の血圧計はアテになりまへん」と言う方のみ持参してもらって検証することにしています。

まだ質問の答えに至っていませんがもう少し大事なことを言っておきたいと思います。
それは市販の血圧計の選び方についてです。
市場には様々な家庭用血圧計が市販されています。
私達医療機関は上腕部に腕帯を巻き上腕動脈を遮断して血圧測定をしていますが、最近手首や指で測定するような血圧計が市販されています。
一見便利で使いやすい物なのですが、正確な血圧を測定する目的から言うと環境の影響を受けやすい末梢動脈は適当ではありません。
従って役に立たない高価なオモチャと言っても過言ではありません。
あんな代物を血圧計と称して売り出すメーカーもメーカーだとは思いますが、この世の中消費者が賢くなることが良い企業を育てることであると考えて、ひとつ賢くなってやろうじゃありませんか。
そうなれば適応性に欠ける商品は自然に市場から消えていくことでしょう。
家庭用血圧計は上腕で測るものをお求め下さい。
メーカーには拘らなくてよいと思います。

ようやく本論です。
血圧測定でどのような値が出るかを真剣に気にされる方は測定時に過度に緊張することが多々あります。
診察時のストレスが血圧上昇を招いているのです。
帰宅するとホッとして安定した血圧に落ち着きます。
今日は診察を受けに行く日だ、と思っただけで上がる人もいますから本当に様々です。
私は家庭での血圧を記録用紙に付けてもらい、それを治療の参考にしています。

たとえば「こんな所に一生住んで居たい」と思うような土地に旅したとしましょう。
それでも自宅に帰り着いた時の安堵感は格別なものがあるでしょう。
そんな違いが血圧にも表れるということです。

歳を取っても水々しい体で
高齢の患者さんが増えました。
でも、予想に反して?皆さんほんとうにお元気です。
そういった患者さんの共通した訴えが、「いつも口が渇く」「ノドが渇く」「だから糖尿病ではないか心配だ」と。
成人が齢を重ねるということは人生において自然の下降線を辿ることに相違ありません。
だんだん枯れていくということになります。
身長は縮み、肌は潤いを失って皺だらけ。エライことです。
歳を取ると運動量の低下、食事量の低下などが顕著になってきます。
すると水分の摂取量が減ってきます。
どうしても体内の水分が不足がちになります。
脱水気味の状態が続くことになります。
血液はドロドロに傾いてきます。
やっぱりエライことです、どうしよう。

解決策が手の届くところにありますよ。
水分をしっかり補給してください。
オシッコにもどんどん行ってください。
慢性の心不全でもないかぎり心配することはありません。
テレビのお守りなど、ジッとしてないで水、お茶、好きな飲み物をジャンジャン飲んじゃいましょう。
脳梗塞と尿意頻回のどっちを取りますか?
ちょっと大げさかな?
でも、口の渇きや肌の潤いもきっと改善してくるはずです。

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