院長・副院長の『素朴な疑問と意見』コラム Apr.01.2004
Question1.日本人のきれい好きは悪くないのですが、何であんなに洗剤で体を洗いまくるのでしょうね。
テレビには洗剤のCMが溢れていますし。
Opinion : 近年、乾燥肌の人が増えています。アトピー性皮膚炎もかつては目立つ事はありませんでした。
なのに洗剤でゴシゴシ、ナイロンタオルで背中ゴシゴシ。もっとも汚れているところは頭、顔、首、
手足、それに陰部くらいかと思うのですが。これではね。「潤い肌よ、さようなら〜」ですね。
Question2.食べ物の賞味期限は皆さん注意して買い物されますが、どーして半年や一年も前にもらって
残っていた薬を 平気でのむ患者さんが多いのでしょうねぇ。
Opinion :薬にも使用期限があります。物にもよりますが製造から2〜3年が多いようです。医療機関では
健康保険の範囲で現在の病気(当然、急性疾患と慢性疾患に対する違いはあります)に対する
投薬はしますが、原則として将来の病気に対する予防的処方はしないのです。狭心症などに対する
頓用薬も、半年も使わなければ改めて出してもらうべきです。
⇒ 先日、患者さんから狭心症の頓用薬に有効使用期限が印刷してある事を教えてもらいました。
その場で当院で使用している頓用薬を持ってきて見たところ、ちゃんと印刷されていました。
少しづつですが改善されていることを実感しました。気が付かずに書いた下線の部分は次の
ように訂正いたします。
狭心症などに対する頓用薬も、印刷してある使用期限が過ぎたものは廃棄して改めて出して
もらうべきです。
Question3.風邪に対する抗生物質の処方についてはEBM(科学的根拠に基づいた治療)の観点から
従来の使われ方に対して疑問が出されています。
Opinion :風邪は万病の元と言われます。原因はウイルス感染なので細菌に対応する抗生物質は効果が
ありません。しかしながら、巷では風邪の診断のもと必ず抗生剤を処方する医師(開業医)が多い。
かつて私も先輩の教えに従って風邪の患者さんに抗生剤を出していた時代がありました。
先輩曰く「風邪のウィルスにつけ込まれるような状況で細菌による感染が重複すると命取りに
なりかねない。よってこれを予防するために抗生剤を処方するのだ」と。なるほどと思う反面、
ホンマにそうかいな?と思っていたので、ある時風邪の患者さんに抗生剤を出すのを恐る恐る
止めて見たのです。でも、なぁーんも問題は起こりません。なーんだ、やっぱり、そんな必要は
なかったんだ!。
以来、私は原則として風邪の患者さんに抗生物質の処方をする事を止めました。ウィルス感染
による風邪に抗生物質は無意味な薬であるので不要な投薬は避けるべきであると言えます。
殆どの抗生剤が効かないMRSA(メチシリン耐性黄色ブドウ球菌)や、MRSAに有効な数少ない
抗生剤バンコマイシンも効かないVRE(バンコマイシン耐性腸球菌)などの出現には私達医師の
抗生剤の出し方にも責任の一端があります。また、患者さん側も抗生剤に対する盲信を改めて
「マイシン出してください」などと要求しないことを望みます。
風邪の治療は咳、痰、ノド痛、鼻水、発熱などに対する対症治療が中心となりますが、油断は
大敵です。何故なら風邪は全身病だからです。肺炎などの二次的可能性に対しては胸部の聴診は
もとよりX線撮影などを用いた診断により躊躇無く抗生剤を処方する決断も私達医師にとって
不可欠な一面なのです。
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